王の行進. Морган Райс
「父のところに案内はできる。裏の通路を知っているから。父の部屋につながっているんだ。でも危険が伴う。一度部屋に入ったら、自分でなんとかしなければならない。出口はないからね。その時点で僕ができることは何もない。君は死ぬことになるかも知れない。本当にそんなことに賭けたいのか?」
ソアは本気で頷き返した。
「良いだろう。」リースが言った。そして突然手を伸ばし、ソアにマントを投げた。
ソアはそれを取り、びっくりした見た。リースがずっと計画していたのではないかと気づいたのだ。
ソアが見上げると、リースが微笑んだ。
「ここに留まる、ってばかなことを言うのはわかってたよ。自分の親友が言うのはそれ以外考えられないからね。」
第四章
ガレスは部屋の中で歩きながら、その夜起こったことを不安な気持ちで思い起こしていた。宴会で起きたことが信じられなかった。なぜすべてが失敗に終わったのか。あの愚かな少年、よそ者のソアに、どうやって自分の服毒計画をかぎつけ、そのうえ杯を途中で奪うということができたのか、さっぱりわからなかった。ガレスは、ソアが飛び込んで来て、杯を叩き落した瞬間を思い出した。杯が落ちる音を聞き、ワインが床にこぼれて自分の夢や野望もそれと共に流れていくのを見た。
その瞬間、ガレスは打ちのめされた。それまで目標にしてきたことが打ち砕かれたのだ。そしてあの犬がワインをなめて死んだ時、自分は終わったと思った。自分の今までの人生がすべて脳裏をよぎり、父親を殺そうとしたことが見つかって終身刑を言い渡されるのを思い描いた。もっと悪いことには、死刑に処せられるかも知れない。愚かだった。こんな計画を立てるのも、あの魔女を訪ねることも、するべきではなかった。
少なくとも、ガレスの行動だけは素早かった。賭けに出て、飛び出し、ソアを最初に非難した。思い出すにつけ、自分が誇らしく思える。なんと素早い反応だったろう。 考えがひらめいた瞬間だった。そして驚いたことに、それが効を奏した。ソアは連行され、その後は宴もまた落ち着いたようだった。もちろん、前と同じ状態というわけにはいかない。だが少なくとも、疑惑はあの少年に向いたようだった。
ガレスは事態がそのままであってくれることを願った。マッギル家の者を狙った暗殺未遂があってから数十年が経っていたため、この出来事に対する取り調べがより本格的に行われることになるのでは、と恐れた。考え直すと、毒を盛ろうなどというのは愚かだった。父は無敵だ。ガレスはそのことを知っていたはずなのに、無理をし過ぎた。そして今では、疑いが自分に向くのも時間の問題だと考えずにはいられなかった。手遅れになる前にソアの罪を証明し、彼が処刑されるためにできることは何でもしなければならないだろう。
ガレスは、少なくとも自分の失敗の埋め合わせはした。未遂に終わった後、暗殺を中止し、今はほっとしていた。計画が失敗し、自分の中のどこか奥のほうで、本当は父を殺したくない、手を汚したくない、という気持ちがあることに気づいた。自分は王位にはつかない。王にはならないだろう。今夜の出来事を経て、そのことを受け止められた。少なくとも、自分は自由でいられる。秘密、裏工作、常に付きまとう、見つかることへの不安。こうしたストレスに対処することは自分にはもうできない。ガレスには重荷だった。